- 日本のeスポーツ市場に関する市場調査、情報収集をしている人
- eスポーツ事業に関する事業計画の策定をする人
- eスポーツ市場に関する資料作成を行う人
- 日本のeスポーツ市場に関心があるビジネスマンや就活生
日本のeスポーツ市場規模
eスポーツの市場規模が成長を続けています。一般社団法人日本eスポーツ連合によれば、eスポーツとは「パソコンゲーム、家庭用ゲーム、モバイルゲームといったデジタルゲームを用いた競技を指す。将棋や囲碁のように、プレイヤーらによる試合が興行化されており、会場やインターネットで試合観戦を楽しめる。」定義されています。
海外ではプロリーグが存在し、数億円程度の報酬を稼ぐ選手も存在しており、1つの産業として広く認識されています。日本では、海外と比べて盛んではありませんが、eスポーツの市場が確立し、今後も市場規模が拡大していくことが予測されます。この記事では、日本のeスポーツ市場規模について様々なデータや統計を整理しました。
KADOKAWA Game Linkage(ファミ通):eスポーツ市場規模は2024年に180億円規模まで成長
「ファミ通」や「ゲームの電撃」など、様々なゲームブランドを展開する株式会社KADOKAWA Game Linkageが2021年4月に公表した資料によれば、2020年の日本国内のeスポーツ市場規模は66.8億円程度で、2024年には184億円まで成長すると予測しています。市場規模は右肩上がりで成長を維持しており、2018年時点の48.3億円から38.2%のプラス成長となりました。2020年から2024年までにかけては、年平均成長率で29%となると見込まれています。
日本の市場規模は世界のeスポーツ市場規模と比較すれば、非常に小さい規模です。オランダの海外ゲーム市場調査会社「Newzoo」が発表したレポートによれば、2020年の世界のeスポーツ市場規模は1165億円と推計されており、2023年には約1758億円まで拡大するとしています。国別にみると、アメリカは約320億円、中国は171億円、韓国が60億円程度となっており、日本のeスポーツ市場規模と比較しても先んじて市場が拡大しています。

eスポーツの競技人口は日本が圧倒的に少ない
現在、世界にはeスポーツの競技人口は全世界で1億人を超えていると言われています。一方で、日本国内のeスポーツの競技人口は世界規模と比較すれば、まだまだ少ないというのが現状です。一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が発行しているプロ認定ライセンスを見てみると、2020年10月時点で217名(15歳以上、義務教育課程を修了している方)にすぎません。今後、多くの成長の余地を残していると考えられます。
一方で、日本のeスポーツファン(試合観戦・動画視聴経営者)は2020年時点で685万人と推定されており、2024年までには146万人まで増加すると予測されています。新型コロナの発生以後は自宅で過ごす人が増加し、eスポーツ大会やイベントのオンライン化により配信者や視聴時間が増加し、ファン数も増加傾向にあると考えられています。
eスポーツの市場区分とビジネス構造:スポンサー収入が7割を占める
eスポーツ市場の収益項目を見ると、チームや大会へのスポンサー料や広告費といったスポンサーの割合が7割近くを占めています。これに続いて、放映権19.2%、アイテム課金・賞金11.5%となっています。大会やイベントがオンライン化したことにより、来場者によるチケット収入が減少しましたが、配信プラットフォームの普及に伴い放映権の取引金額が拡大し、前年比で約2.5倍の19.2%まで成長しました。
eスポーツ市場のビジネスモデルは野球やサッカー等のプロスポーツと既に同様の構造になっています。具体的に言えば、プロゲーマーやチームのユニフォームに企業のロゴを入れる、大会のスポンサーとして広告を出す等が挙げられます。
最近では、ゲームメーカーやeスポーツに直接かかわりのない企業もスポンサー参入が相次いでいます。例えば、自動車メーカーの「ホンダ」、アパレルメーカー「ビームス」、食品メーカー「日清食品」、通信事業者の「KDDI」が代表的な事例として挙げられます。
経済産業省:波及効果も含めれば2025年にeスポーツ市場規模は3,250億円
経済産業省はeスポーツの健全かつ多面的な発展に向けて一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)と共同で、周辺市場・産業への経済効果を含めた国内のeスポーツの市場規模の試算、社会的意義に係る現状、課題、今後の展望等の整理及び検討を行っています。2020年3月に公表された報告書では、2025年の日本におけるeスポーツ市場の直接市場規模の目標を600~700億円、波及領域を含めた市場規模では2850億円~3250億円を目標値として設定しています。
この報告書では、eスポーツ市場がゲーム産業に留まるものではなく、様々な市場や産業へ大きな経済効果をもたらすと位置付けられています。eスポーツ市場の周辺として考えられる市場・産業の例は以下の通りですが、周辺領域も含めれば、eスポーツ市場の市場規模は更に広義に捉えることもできます。
- 市場拡充:専用ウェア、専用チェア、ゲーミングPC、専用マウス、スピーカー、ディスプレイ、通信機器、通信環境、チート判定関連機器など
- 人材育成、異分野融合研究:プロ選手育成に係る専門学校、大学、予備校、ゲーム及びシステム開発者育成、産学連携など
- 地方創生:練習場整備、大会用会場(競技場)整備 など

eスポーツの発展が細部の産業にも波及効果
更にこの報告書ではeスポーツ市場の発展により、市場の外部に位置する産業まで経済効果の恩恵を受けることが指摘されています。具体的なeスポーツ市場の発展による波及効果として以下のような産業が説明されています。
- 飲食等サービス:eスポーツ関連の大会やイベントが開催されることで、来場者が周辺の飲食店を利用
- 小売り:eスポーツファン増加に伴う周辺機器やグッズの購入の増加
- 情報通信:eスポーツを実施するためにはネット回線やシステム基盤が不可欠であるため、ネット契約や配信プラットフォームのインフラ整備が増加
- 建築材料:eスポーツの集客力向上により、施設や専用アリーナが必要なり、建築業者が雇われ、鎖骨やボトル等の建築材料の需要が増加
- 電子部品:eスポーツ市場の拡大に伴い、ゲーミングPC需要が高まり、それらを製造するための電子部分の需要も増加
- 不動産:専用アリーナ建設用の土地
日本のeスポーツ市場の課題と今後の予測
日本のeスポーツ市場が今後も成長を続けることは理解できました。次に、これまでeスポーツ市場が発展をしてきた主な要因と今後の発展に向けた課題についても整理をしたいと思います。
eスポーツ市場の発展の要因
新型コロナウイルスの拡大により、世界的なオンラインゲームの普及が背景にはあります。また、日本国内の足元の市場成長はeスポーツタイトルのラインナップ強化、「Shadowverse」、「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS (PUBG)」、「レインボーシックス シージ」等といった人気タイトルのオンライン大会が開催されたことが挙げられます。
また、先ほども述べた通り、大手企業のスポンサー参入が相次いでいます。eスポーツのプレーヤーは若年層が多く、若年層へのアプローチ手段として企業がスポンサーになる例が増えています。このほか、eスポーツに関するインフラ整備も最近は進んでいます。これまではイベントホールで大会が開催されていましたが、銀座や熊谷にeスポーツの関連のビルが建設されており、専用アリーナの建設が増えており、地方でのイベントの開催も増えています。
将来的には5Gの浸透によるeスポーツ市場も恩恵を受けると考えられます。「高速・大容量」、「低遅延」、「多接続」が実現する5Gが広く普及すれば、モバイルでも大勢のプレイヤーが同時にストレスを感じないプレイが可能になります。また、完全なオンラインで快適な環境でのリモート観戦が可能になります。
eスポーツ市場の課題
一般社団法人日本 e スポーツ連合によれば、日本のeスポーツ市場の発展のために今後取り組むべき課題として以下のような課題が挙げられています。
- eスポーツ選手人口の拡大
- トップ選手の育成と技術向上
- 大会数増加のための収益化・自走体制の構築
- 行政との連携・関係法令への対応
- 国際的な大型大会実現
このほか、日本でeスポーツが普及しない理由としても複数の要因が考えられます。まず、競技タイトルの問題として、日本eスポーツ連合に加盟しているメーカーのゲームタイトルが中心になって開催されており、世界中で開催される人気ゲームでタイトルは日本国内では開催されていないという現状があります。パズドラやモンスト等、日本国内で人気のゲームタイトルが目立っており、日本のeスポーツ市場がガラパゴス化している部分も否めません。
また、大会を開催しても、法律上、海外のような高額賞金を簡単に出すことができないという問題があります。eスポーツの高額賞金は景品表示法によって上限が規制されるのではないか?という議論がありました。これを受けて、日本eスポーツ連合が「プロ化することによって高額賞金を受け取ることができる」とし、ライセンスの発行に着手したとされています。これに対して、なぜ新設される特定の団体に「プロを定義」する資格があるのかという議論もあり、根本的な解決には至っていません。
日本はこれまで数々の家庭用ゲーム機を誕生させてきたゲーム大国であり、世界でトップクラスのゲーム市場を持ちながらも、eスポーツ市場は発展途上といえます。しかし、将来的にeスポーツがスポーツとしての認知が広がり、市場として高い成長の余地を残していることは事実でしょう。